固定電話の契約数は減少の一途
総務省の通信利用動向調査によると、日本の固定電話契約数は 2000 年のピーク時に約 6,300 万回線でしたが、2024 年には約 1,400 万回線まで減少しています。約 20 年で 4 分の 1 以下にまで縮小した計算です。携帯電話の普及、IP 電話の台頭、そしてコミュニケーション手段の多様化が主な要因ですが、「固定電話を持っているけれど、ほとんど使っていない」という世帯は依然として多く存在します。
固定電話を解約すべきかどうかは、単純にコストだけで判断できる問題ではありません。セキュリティ上のメリット、社会的な信用、緊急時の通信手段、各種サービスの登録要件など、多角的な検討が必要です。本記事では、固定電話の維持と解約それぞれのメリット・デメリットを整理し、あなたの状況に最適な判断を下すための材料を提供します。
固定電話の維持にかかるコスト
アナログ回線の場合">NTT アナログ回線の場合
NTT のアナログ固定電話を維持する場合、最低限のコストは以下のとおりです。
- 基本料金: 住宅用で月額 1,870 円 (税込)。プッシュ回線の場合は月額 1,980 円 (税込)
- ユニバーサルサービス料: 月額 2〜3 円程度
- 電話リレーサービス料: 月額 1 円程度
- ナンバーディスプレイ: 月額 440 円 (税込)。迷惑電話対策として事実上必須
- ナンバーリクエスト: 月額 220 円 (税込)。非通知着信の拒否に必要
基本料金だけでも年間約 22,440 円、ナンバーディスプレイとナンバーリクエストを加えると年間約 30,360 円になります。ほとんど使わない電話に年間 3 万円以上を支払っている計算です。さらに迷惑電話おことわりサービス (月額 660 円) を追加すると、年間約 38,280 円に達します。
ひかり電話の場合
ひかり電話は、光回線のオプションとして提供される IP 電話サービスです。NTT のひかり電話の基本料金は月額 550 円 (税込) と、アナログ回線の約 3 分の 1 です。ただし、ひかり電話を利用するには光回線 (フレッツ光など) の契約が前提となるため、光回線の月額料金 (戸建て約 5,720 円、マンション約 3,630 円) が別途必要です。光回線をインターネット接続にも使用している場合は、ひかり電話の追加コストは月額 550 円のみと考えてよいでしょう。
10 年間の累計コスト
固定電話を 10 年間維持した場合の累計コストを試算すると、その金額の大きさが実感できます。
- NTT アナログ回線 (基本料金のみ): 約 224,400 円
- NTT アナログ回線 (迷惑電話対策込み): 約 382,800 円
- ひかり電話 (基本料金のみ): 約 66,000 円
アナログ回線で迷惑電話対策サービスを契約している場合、10 年間で約 38 万円のコストが発生します。この金額を他の用途に充てられると考えれば、解約の経済的メリットは明白です。
固定電話を解約するメリット
コスト削減
前述のとおり、年間 2〜4 万円のコスト削減が最大のメリットです。特に、固定電話をほとんど使用していない世帯にとっては、純粋な無駄遣いの解消になります。
電話詐欺電話のリスク排除">迷惑電話・詐欺電話のリスク排除
固定電話は迷惑電話や特殊詐欺の主要なターゲットです。警察庁の統計によると、特殊詐欺の約 80% は固定電話への着信がきっかけで被害が発生しています。固定電話を解約すれば、この経路からの詐欺リスクをゼロにできます。特に高齢者がいる世帯では、固定電話の解約が最も効果的な詐欺対策になり得ます。特殊詐欺対策の関連書籍も参考にしてください。
個人情報露出の解消">電話帳掲載による個人情報露出の解消
古くから固定電話を契約している世帯では、電話帳 (ハローページ) に氏名・住所・電話番号が掲載されたままになっているケースがあります。電話帳の情報は名簿業者に収集され、テレマーケティングや詐欺のターゲットリストに利用されることがあります。固定電話を解約すれば、この情報露出のリスクも解消されます。
配線・機器の撤去による住環境の改善
固定電話の配線や電話機は、部屋のスペースを占有します。特にコードレス電話の親機は一定の設置スペースが必要で、配線の取り回しも煩雑です。解約により、これらの機器と配線を撤去でき、住環境がすっきりします。
固定電話を解約するデメリットと注意点
固定電話番号を登録しているサービスの変更
固定電話番号を連絡先として登録しているサービスがある場合、解約前にすべて携帯電話番号に変更する必要があります。見落としやすいものとして、以下があります。
- 金融機関: 銀行口座、証券口座、保険契約の連絡先
- 公的機関: 市区町村役場、年金事務所、税務署への届出
- 学校・保育園: 緊急連絡先として登録している場合
- 医療機関: かかりつけ医、病院の患者情報
- 不動産関連: 賃貸契約、管理組合への届出
- 各種会員サービス: ネットショッピング、ポイントカード、会員制サービス
解約前に、固定電話番号で登録しているサービスを網羅的にリストアップし、すべて変更を完了させてから解約手続きに進んでください。
社会的信用への影響
かつては「固定電話がある = 定住している = 信用がある」という認識がありましたが、この価値観は急速に薄れています。現在では、クレジットカードの審査やローンの申し込みにおいて、固定電話の有無が審査結果に大きく影響することはほとんどありません。ただし、一部の高齢者向けサービスや地域の自治会では、固定電話番号の提出を求められるケースが残っています。
緊急時の通信手段
大規模災害時には、携帯電話の基地局が被災して通信不能になるリスクがあります。NTT のアナログ固定電話は、電話局から直接給電される仕組みのため、停電時でも通話可能です (ただし、コードレス電話の子機は使用不可)。一方、ひかり電話は停電時に使用できません。災害時の通信手段として固定電話を維持する判断は合理的ですが、災害用伝言ダイヤル (171) は携帯電話からも利用可能であり、代替手段は存在します。
FAX の利用
固定電話回線をFAX の送受信に使用している場合、解約すると FAX が使えなくなります。ビジネスや医療機関との連絡で FAX を日常的に使用している場合は、インターネット FAX サービスへの移行を検討してください。月額数百円から利用でき、スマートフォンやパソコンから FAX の送受信が可能です。
電話加入権の扱い
NTT のアナログ回線を契約する際に支払った施設設置負担金 (電話加入権、36,000 円) は、解約しても返金されません。ただし、電話加入権は休止 (利用休止) という選択肢もあり、休止中は基本料金が発生しません。休止期間は最長 10 年間で、その間に再開することも可能です。「完全に解約するのは不安だが、コストは削減したい」という場合は、休止を検討してください。
固定電話の代替手段
携帯電話への一本化
最もシンプルな代替手段は、携帯電話に一本化することです。現在の携帯電話の通話品質は固定電話と遜色なく、かけ放題プラン (月額 1,980 円程度) を利用すれば通話料金の心配もありません。家族全員が携帯電話を持っている世帯であれば、固定電話の役割はほぼ携帯電話で代替できます。
IP 電話サービス
050 番号の IP 電話サービスは、月額基本料金が無料〜数百円と低コストです。インターネット回線があれば利用でき、固定電話に近い使い勝手を維持できます。ただし、110 番や 119 番などの緊急通報ができない点に注意が必要です。IP 電話の関連書籍も参考にしてください。
ソフトバンク「おうちのでんわ」
ソフトバンクの「おうちのでんわ」は、LTE 回線を利用した固定電話サービスで、月額基本料金は 550 円 (税込) からです。既存の電話機をそのまま使用でき、市外局番付きの電話番号 (03、06 など) も利用可能です。NTT のアナログ回線からの番号ポータビリティにも対応しているため、電話番号を変えずに乗り換えられます。光回線が不要なため、インターネットを携帯電話のテザリングで済ませている世帯にも適しています。
クラウド PBX・仮想電話番号
ビジネス用途であれば、クラウド PBX や仮想電話番号サービスが有力な代替手段です。固定電話番号を維持しつつ、着信をスマートフォンに転送できるため、オフィスに物理的な電話機を設置する必要がありません。月額数千円から利用でき、複数の端末で同時に着信を受けられる柔軟性もあります。
解約前のチェックリスト
固定電話の解約を決断する前に、以下の項目をすべて確認してください。
- 固定電話番号で登録しているサービスをすべてリストアップしたか
- リストアップしたサービスの連絡先を携帯電話番号に変更したか
- 家族全員 (特に高齢の家族) の同意を得たか
- FAX を使用している場合、代替手段を確保したか
- 自宅のセキュリティシステムが固定電話回線に依存していないか確認したか
- マンションのインターホンが固定電話回線と連動していないか確認したか
- 電話加入権の休止と完全解約のどちらが適切か検討したか
- 災害時の通信手段として携帯電話だけで十分か検討したか
すべての項目をクリアした上で解約手続きに進めば、解約後に「しまった」と後悔するリスクを最小限に抑えられます。ひかり電話への移行ガイドや VoIP の基礎知識も、代替手段の検討に役立ちます。
解約手続きの方法
NTT アナログ回線の解約
NTT の固定電話を解約する場合は、116 番 (NTT 東日本・西日本共通) に電話するか、NTT の公式サイトから手続きできます。解約には契約者本人の確認が必要で、本人確認書類の提示を求められる場合があります。解約日は申し込みから数日〜2 週間程度で設定され、解約日以降は電話が使用できなくなります。
ひかり電話の解約
ひかり電話のみを解約し、光回線 (インターネット) は継続する場合は、プロバイダーまたは NTT に連絡してひかり電話オプションの解約を申し込みます。光回線ごと解約する場合は、プロバイダーの解約手続きが必要です。契約期間内の解約には違約金が発生する場合があるため、契約内容を事前に確認してください。
電話加入権の休止手続き
完全解約ではなく休止を選択する場合は、116 番に電話して「利用休止」を申し込みます。休止中は基本料金が発生せず、電話番号は最長 5 年間保持されます (届出により最長 10 年まで延長可能)。休止期間が満了すると電話番号は失効するため、将来的に再開する可能性がある場合は期限管理に注意してください。
まとめ - 判断のフレームワーク
固定電話を解約すべきかどうかは、以下の 3 つの軸で判断してください。
- 利用頻度: 月に数回以下しか使わないなら、コスト面で解約が合理的
- セキュリティ: 高齢者がいる世帯では、特殊詐欺のリスク排除として解約が有効
- 代替手段: 携帯電話、IP 電話、クラウド PBX など、用途に応じた代替手段が確保できるか
「なんとなく残している」固定電話に年間数万円を支払い続けるのは、経済的にもセキュリティ的にも合理的ではありません。本記事のチェックリストを活用し、あなたの世帯にとって最適な判断を下してください。