電話加入権 (正式名称: 施設設置負担金) とは、NTT の固定電話回線を新規に設置する際に支払う権利金です。かつては 72,000 円 (税抜) と高額で、企業の貸借対照表に無形固定資産として計上され、売買や質入れ (担保設定) の対象にもなっていました。バブル期には 1 件 10 万円以上で取引されることもあり、「電話債券」として資産価値を持つ存在でした。
電話加入権の歴史は、日本の通信インフラ整備と密接に結びついています。戦後の電話網拡充期に、NTT (当時は日本電信電話公社) が設備投資の原資として加入者から徴収したのが始まりです。電話が「申し込んでも数年待ち」だった時代には、加入権は電話を引くための「入場券」としての価値がありました。1985 年の NTT 民営化後も制度は維持され、累計で約 5 兆円の施設設置負担金が徴収されたとされています。
2005 年に施設設置負担金は 36,000 円 (税抜) に半額化され、同時に加入権不要のライトプラン (月額料金が 275 円高い代わりに施設設置負担金が不要) も登場しました。携帯電話の普及により固定電話の需要が急減し、電話加入権の市場価値は数千円程度まで下落しています。会計上は取得原価 (72,000 円または 36,000 円) で計上されたまま減損処理されていないケースも多く、企業の財務諸表上の「隠れた含み損」として問題視されることがあります。
NTT は電話加入権の廃止を検討していますが、全国で約 2,000 万件の既存権利者への補償問題があり、結論は出ていません。仮に廃止された場合、既に支払った施設設置負担金の返還を求める声が上がる可能性がありますが、NTT は「施設設置負担金は電話網の建設・維持に充当済みであり、返還の対象ではない」との立場です。PSTN から IP 網への移行後も電話加入権の扱いは変わっておらず、ひかり電話に移行しても加入権は維持されます。電話番号の構造で固定電話の番号体系を、電話番号の桁数の歴史で通信インフラの変遷を確認できます。