非通知電話とは何か
非通知電話とは、発信者が番号通知を意図的に非表示にして発信する電話のことです。日本では発信時に「184」を番号の前に付けるか、回線設定で非通知を選択することで、着信側に番号が表示されなくなります。固定電話 / 携帯電話のいずれでも非通知発信は可能であり、受信側のディスプレイには「非通知」「非通知設定」などと表示されます。03 や 06 などの市外局番から始まる固定電話、090・080 で始まる携帯電話を問わず発生します。
相手が分からない着信は、出るべきか放置すべきかの判断が難しく、不安だけが残りがちです。本記事では、非通知電話がかかってくる理由から具体的な対処法、各キャリアの設定方法、警察への相談手順まで網羅的に解説します。
非通知電話がかかってくる理由
正当な理由による非通知発信
企業の代表番号から発信する場合、PBX (構内交換機) の設定により自動的に非通知になるケースがあります。医療機関が患者に連絡する際や、公的機関が業務上の理由で非通知にする場合も少なくありません。また、個人がプライバシー保護の目的で非通知を選択することもあります。転職活動中の企業からの連絡や、不動産会社からの折り返しなど、日常的な場面でも非通知電話は発生します。NTT 東日本 / 西日本のナンバー・ディスプレイサービスを契約していない回線では、そもそも番号が表示されないため、非通知と混同されることもあります。
悪意のある非通知発信
ストーカーによる電話嫌がらせの一環として繰り返し非通知電話をかけるケース、いたずら電話、詐欺の前段階としての在宅確認など、悪意を持って非通知にするケースも存在します。特に深夜や早朝の非通知電話は嫌がらせの可能性が高く、精神的な負担が大きくなります。オレオレ詐欺や還付金詐欺のように電話を入口とする手口では、用件を告げない短い着信そのものを警戒の材料として扱ってください。非通知で無言のまま切れる着信が続く場合は、ロボコールによる自動発信も疑いの対象に入れ、無言電話 (サイレントコール) の対処法も併せて確認してください。
非通知電話への基本的な対処法
非通知電話を受けた際の対処法は、状況に応じて複数の選択肢があります。最も安全な対応は「出ない」ことですが、仕事の関係で非通知電話に出る必要がある場合もあるでしょう。以下に、状況別の対処法を整理します。
- 非通知着信拒否を設定する: スマートフォンや固定電話の設定で、非通知の着信を自動的に拒否できます。非通知だけを遮断できるため、通知ありの着信は今まで通り受けたい場合の第一手になります。
- ナンバーリクエストを利用する: NTT 東日本 / 西日本が提供する有料オプションで、非通知の発信者に対し番号を通知してかけ直すよう自動音声で案内します。申し込みが必要なため、料金と適用条件は契約先の公式案内で確認してください。
- 応答せず留守番電話で対応する: 非通知電話には出ず、留守番電話にメッセージを残してもらう方法です。正当な用件であればメッセージが残ります。
- 応答する場合は個人情報を伝えない: やむを得ず応答する場合は、名前 / 住所 / 生年月日などの個人情報を絶対に伝えないでください。「どちら様ですか」と相手の身元を先に確認しましょう。
- 通話内容を録音する: 脅迫や嫌がらせの証拠として、通話録音アプリや録音機能を活用してください。自分が当事者である通話の録音は証拠を残す手段として広く使われていますが、記録の扱いに迷う場合は警察や弁護士に相談してから使ってください。
キャリア別の非通知着信拒否設定
iPhone (iOS) の設定
iPhone では「設定」→「電話」→「不明な発信者を消音」をオンにすることで、連絡先に登録されていない番号からの着信を自動的に消音できます。非通知電話も対象となり、着信音が鳴らずに直接留守番電話に転送されます。ただし、この設定は非通知以外の未登録番号もすべて消音する点に注意が必要です。
Android の設定
Android 端末では、電話アプリの設定から「ブロック済みの番号」→「不明な発信者」をオンにすることで、非通知電話をブロックできます。メーカーや機種によって設定画面の名称が異なる場合がありますが、基本的な手順は共通です。
固定電話の設定
NTT の固定電話では「ナンバーリクエスト」サービスを契約することで、非通知電話を自動的に拒否できます。ひかり電話でも同様のサービスが利用可能です。また、各メーカーの電話機にも非通知拒否機能が搭載されている場合があります。取扱説明書を確認し、設定を有効にしてください。
繰り返し非通知電話がかかる場合の対応
非通知電話が繰り返しかかってくる場合は、ストーカー行為や嫌がらせの可能性があります。
- 着信記録を保存する: 着信日時、回数、通話内容 (応答した場合) を詳細に記録します。スクリーンショットや通話録音も有効な証拠です。
- 警察に相談する: 最寄りの警察署の生活安全課に相談してください。緊急性がない場合は警察相談専用電話 #9110 も利用できます。
- ストーカー規制法の適用を求める: ストーカー規制法では、電話による嫌がらせも「つきまとい等」に含まれます。警告を出すのは警察本部長等 (警視総監 / 道府県警察本部長 / 警察署長) で、禁止命令等は都道府県公安委員会が行います。警告を経ることが条件ではなく、身体の安全などを守るために緊急の必要があると認められる場合には、聴聞を経ずに禁止命令等が出されることもあります。
- 電話番号の変更を検討する: 着信拒否だけでは対処しきれない場合、通信事業者に事情を説明して番号変更の手続きを行いましょう。
非通知電話に関する法律と権利
日本の法律では、非通知電話そのものは違法ではありません。しかし、繰り返しの非通知電話による嫌がらせは、ストーカー規制法や各都道府県の迷惑防止条例に抵触する可能性があります。ストーカー規制法第 2 条第 1 項第 5 号は、「電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること」を「つきまとい等」の一類型として定めています。これを反復して行う「ストーカー行為」に対する罰則は 1 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金 (同法第 18 条)、禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合は 2 年以下の拘禁刑または 200 万円以下の罰金 (同法第 19 条) です。同法は GPS 機器等による位置情報の無承諾取得も規制対象としており (第 2 条第 3 項)、電話による嫌がらせと重なる事案でも適用の余地があります。
また、非通知電話を利用した詐欺行為は刑法の詐欺罪 (第 246 条) に該当し、10 年以下の拘禁刑に処される場合があります。被害に遭った場合は、泣き寝入りせず法的手段を検討してください。
非通知電話に関するよくある誤解
「非通知電話は必ず危険」という誤解
非通知電話のすべてが悪意のあるものとは限りません。前述のとおり、企業の PBX 設定や公的機関の業務上の理由で非通知になるケースは少なくありません。転職活動中の企業からの連絡、病院からの検査結果の通知、弁護士事務所からの折り返しなど、正当な理由による非通知電話も日常的に発生しています。非通知電話を一律に拒否すると、重要な連絡を逃す可能性がある点に留意してください。
「非通知電話の発信元は絶対に分からない」という誤解
一般の個人が非通知電話の発信元を特定することは確かに困難です。しかし捜査機関は、法令上の手続を経て通信事業者へ通信記録を照会できます。ストーカー被害や脅迫事案では、捜査を通じて発信元にたどり着く余地が残ります。「どうせ犯人は分からない」と決めつけず、着信記録や録音を保全した上で警察に相談してください。
高齢者を守るための非通知電話対策
高齢者は特殊詐欺の主要なターゲットであり、非通知電話への対策は特に重要です。警察庁の統計では、2024 年 (令和 6 年) の特殊詐欺の被害のうち、法人被害を除いた被害者の 65.4% が 65 歳以上でした。家族が高齢者の電話環境を整備し、被害を未然に防ぎましょう。
- 自動録音警告機能付き電話機の導入: 着信時に「この通話は録音されます」と自動音声で伝える電話機は、名前を出したくない相手に会話を続けにくくさせる狙いがあります。自治体によっては購入費用の補助制度を設けている場合もあるため、居住地の窓口で確認してください
- 迷惑電話防止装置の設置: 着信時に警告メッセージを流し、通話を自動録音する装置です。自治体や警察が貸し出しを行っている地域もあるため、居住地の窓口に問い合わせてください。詳しくは迷惑電話の撃退法もご覧ください
- 家族間の合言葉を決める: 「オレオレ詐欺」対策として、家族間で合言葉を決めておきましょう。電話で金銭を要求された場合は、合言葉で本人確認を行います
- 留守番電話の活用: 在宅中でも留守番電話に設定し、メッセージを確認してから折り返す習慣をつけましょう。用件を残さない着信を切り分けられるうえ、折り返す前に相手を確かめる時間も作れます
まとめ - 非通知電話から身を守るために
非通知電話への対処は、事前の設定と冷静な対応が鍵です。非通知着信拒否の設定を有効にし、やむを得ず応答する場合は電話番号の個人情報保護の観点から個人情報を伝えないことを徹底してください。繰り返しの非通知電話は犯罪行為に該当する可能性があるため、証拠を保全した上で警察に相談することが重要です。一人で抱え込まず、専門機関の力を借りて安全を確保しましょう。