公衆電話">激減する公衆電話
NTT 東日本・西日本が管理する公衆電話の設置台数は、ピーク時の 1984 年に約 93 万台でしたが、2024 年には約 13 万台まで減少しました。約 86% が撤去された計算です。利用回数も激減しており、1 台あたりの 1 日の平均利用回数は 1 回未満にまで落ち込んでいます。
公衆電話の衰退は世界的な現象です。イギリスの象徴的な赤い電話ボックスも大半が撤去され、残されたものは Wi-Fi スポットや除細動器 (AED) の設置場所に転用されています。アメリカでも公衆電話は急速に姿を消しており、ニューヨーク市では 2020 年に最後の公衆電話が撤去されました。
それでも公衆電話が残る理由
法律で設置が義務付けられている
日本では電気通信事業法施行規則により、NTT に公衆電話の設置義務が課されています。具体的には、市街地では概ね 500m 四方に 1 台、それ以外の地域では概ね 1km 四方に 1 台の設置が求められています。この「ユニバーサルサービス」としての位置づけが、公衆電話が完全に消えない最大の理由です。
ただし、2022 年の法改正により設置基準が緩和され、市街地は 1km 四方に 1 台に変更されました。この緩和により、今後さらに約 4 万台の公衆電話が撤去される見通しです。それでも約 9 万台は法的義務として維持されます。
災害時の通信手段
公衆電話が「最後の砦」と呼ばれる最大の理由は、災害時の通信確保にあります。大規模災害が発生すると、携帯電話の基地局が停電や物理的損壊で機能停止し、回線が輻輳 (ふくそう) して通話がつながりにくくなります。2011 年の東日本大震災では、携帯電話の通話成功率が一時 10% 以下に低下しました。
一方、公衆電話は NTT の固定電話網に直接接続されており、災害時にも優先的に回線が確保されます。固定電話網は携帯電話網とは独立したインフラであり、基地局の停電の影響を受けません。さらに、公衆電話は電話回線から電力を供給される (局給電) ため、停電時でも動作します。固定電話の解約を検討する際にも、災害時の通信手段の確保は重要な判断材料です。
災害時には公衆電話が無料で利用できるようになります。NTT は大規模災害の発生時に公衆電話を無料化する措置を取っており、硬貨やテレホンカードなしで通話が可能になります。緊急通報 (110 番、119 番) は平常時から無料です。
携帯電話を持たない人のセーフティネット
携帯電話の普及率は約 90% に達していますが、約 10% の人々は携帯電話を持っていません。高齢者、経済的に困窮している人、子どもなど、携帯電話を持たない層にとって、公衆電話は外出先から連絡を取る唯一の手段です。特に小学生の登下校時の安全対策として、通学路沿いの公衆電話は重要な役割を果たしています。子どもの電話安全対策の一環として、公衆電話の使い方を教えておくことは今でも有効です。
公衆電話の使い方を知らない世代
NTT 東日本の調査によると、10 代の約 70% が「公衆電話を使ったことがない」と回答しています。受話器を取る → 硬貨を入れる → 番号をダイヤルする、という基本操作を知らない若者が増えています。災害時に公衆電話が唯一の通信手段になった場合、使い方を知らなければ意味がありません。
公衆電話の基本的な使い方は以下のとおりです。
- 受話器を取る: 受話器を持ち上げると「ツー」という発信音が聞こえる
- 硬貨を入れる: 10 円硬貨または 100 円硬貨を投入する (100 円硬貨はお釣りが出ないので注意)
- 番号をダイヤルする: 相手の電話番号をボタンで入力する
- 通話する: 相手が応答したら通話開始。残り時間が少なくなると警告音が鳴る
- 緊急通報: 110 番・119 番は硬貨なしで発信可能。受話器を取って番号をダイヤルするだけ
公衆電話の設置場所の探し方
いざという時に備えて、自宅や職場の近くにある公衆電話の場所を把握しておきましょう。NTT 東日本・西日本の Web サイトで公衆電話の設置場所を検索できます。また、Google マップで「公衆電話」と検索すると、周辺の公衆電話がピンで表示されます。
公衆電話は駅構内、コンビニの前、病院、市役所、学校の近くなど、人が集まる場所に設置されている傾向があります。災害時に慌てて探すのではなく、平常時に最寄りの公衆電話の場所を確認しておくことが、防災対策の一つです。おすすめの防災グッズとあわせて、通信手段の確保も防災計画に組み込みましょう。
公衆電話の未来
公衆電話の設置台数は今後も減少を続けますが、完全に消えることはないでしょう。災害時の通信手段としての役割は、携帯電話網が 100% の信頼性を達成しない限り不可欠です。一方で、従来型の公衆電話に代わる新しい形態も模索されています。NTT は 2023 年から「デジタル公衆電話」の実証実験を開始しており、Wi-Fi 機能や災害情報の表示機能を備えた次世代型の公衆電話の導入を検討しています。
ひかり電話への移行が進む中でも、公衆電話は独自の存在意義を持ち続けています。緊急通報番号の完全ガイドとあわせて、災害時の通信手段を家族で確認しておきましょう。
伝言ダイヤル-171-との連携">災害用伝言ダイヤル (171) との連携
大規模災害が発生すると、電話回線が輻輳して通話がつながりにくくなります。このとき活用すべきなのが、NTT が提供する「災害用伝言ダイヤル (171)」です。公衆電話から 171 を利用する方法を知っておくことは、災害時の通信確保において極めて重要です。
公衆電話から 171 を使う手順
公衆電話から災害用伝言ダイヤルを利用する手順は以下のとおりです。災害時に公衆電話が無料化されている場合は、硬貨の投入は不要です。
- 伝言を録音する場合: 受話器を取る → 171 をダイヤル → 1 を押す → 自宅の電話番号 (市外局番から) を入力 → 伝言を録音する (30 秒以内)
- 伝言を再生する場合: 受話器を取る → 171 をダイヤル → 2 を押す → 安否を確認したい相手の電話番号を入力 → 録音された伝言を聞く
ポイントは、伝言の「鍵」となるのが固定電話の番号であるという点です。家族間で「災害時は自宅の固定電話番号を鍵にして 171 に伝言を残す」というルールを事前に決めておけば、携帯電話がつながらない状況でも安否確認が可能になります。固定電話を解約している世帯でも、家族の誰かの携帯電話番号を鍵として使えます。
毎月 1 日と 15 日は体験利用が可能
災害用伝言ダイヤル (171) は、毎月 1 日と 15 日に体験利用ができます。実際に公衆電話から 171 を操作してみることで、いざという時に慌てずに使えるようになります。家族で防災訓練の一環として、公衆電話の場所の確認と 171 の体験利用を定期的に行うことをおすすめします。
Web 171 との使い分け
NTT は「Web 171」というインターネット版の災害用伝言板も提供しています。スマートフォンやパソコンからテキストで安否情報を登録・確認できるサービスです。ただし、Web 171 はインターネット接続が前提であり、基地局が停止した状況では利用できません。公衆電話からの 171 は固定電話網を使うため、インターネットが使えない状況でも機能します。両方の使い方を知っておき、状況に応じて使い分けることが最善の備えです。
固定電話に関する FAQ でも災害時の通信手段について解説しています。東京 03 エリアのように人口密集地では、災害時に公衆電話に長蛇の列ができることも想定されます。家族の集合場所と連絡手段を複数確保しておくことが、防災計画の基本です。