QoS (Quality of Service) とは、ネットワーク上で特定の通信トラフィックに優先度を設定し、一定の通信品質を保証する技術の総称です。電話通信では、音声パケットを Web 閲覧やファイルダウンロードなどのデータ通信より優先して処理するために使用されます。QoS が適切に設定されていないネットワークで VoIP 通話を行うと、音声の途切れ、遅延、エコーなどの品質劣化が発生します。
QoS の実現手法は主に 3 つあります。第一に、パケットの優先度付け (マーキング)。DSCP (Differentiated Services Code Point) という 6 ビットのフィールドで音声パケットに高優先度 (EF: Expedited Forwarding、値 46) を付与し、ルーターやスイッチがこの値を読み取って優先転送します。第二に、帯域制御。音声トラフィックに一定の帯域を予約し、他のトラフィックが増加しても音声用の帯域が侵食されないようにします。第三に、キューイング制御。ルーター内部で音声パケット専用のキュー (待ち行列) を設け、他のパケットより先に処理する LLQ (Low Latency Queuing) が一般的です。
VoIP 通話に必要な QoS の目安値は、レイテンシ (片道遅延) 150ms 以下、ジッタ (遅延のばらつき) 30ms 以下、パケットロス率 1% 以下です。これらの値を超えると、通話品質が体感的に劣化します。特にパケットロスは音声の途切れに直結するため、最も注意すべき指標です。1 通話あたりに必要な帯域幅は、使用するコーデックによって異なりますが、G.711 で約 87kbps、G.729 で約 32kbps が目安です。
企業ネットワークでは、音声・映像・データの各トラフィックにクラスを割り当て、クラスごとに帯域と優先度を設定するのが標準的な設計です。クラウド PBX を導入する場合、社内 LAN だけでなくインターネット接続回線の QoS も考慮する必要があります。ISP (インターネットサービスプロバイダ) が提供する回線では、ISP 側で QoS を保証するサービス (帯域保証型回線) を選択するか、SD-WAN を導入して複数回線の品質を動的に制御する方法が有効です。