レイテンシとは、データが送信元から受信先に到達するまでの遅延時間です。電話通信では、話した声が相手に届くまでの時間差として体感され、通話品質を左右する指標の一つです。ITU-T の勧告 G.114 は、片道の遅延を 150ms 未満に抑えれば、ほとんどの用途で遅延をほぼ意識せずにやり取りできるとしています。
レイテンシの体感は段階的に悪化します。0〜150ms では自然な会話が成立し、遅延をほとんど意識しません。150ms を超えて遅延が大きくなるほど、相手の反応の遅れや、相手と同時に話し始める「かぶり」が目立つことがあります。G.114 は、片道 400ms を超える遅延を一般的なネットワーク計画では容認できない値としています。静止衛星 (高度約 36,000km) を経由する通話では、地上局の間の電波の伝わりだけで片道約 260ms かかり (G.114 の計画値)、独特の「間」が生まれます。
VoIP 通話のレイテンシは、複数の要因の合計で決まります。コーデックによる音声の符号化 / 復号化 (G.114 の付録の表では G.711 で 1ms 未満、G.729 で 25〜35ms)、パケットがネットワークを伝わる時間 (光ファイバーで 1,000km あたり約 5ms)、受信側のジッタバッファ (パケットの到着時刻のばらつきを吸収するバッファ) での待ち時間が加わります。G.114 の付録は、5,000km 以内の多くの地域内経路の VoIP 通話では口から耳までの遅延が 150ms 未満に収まる見込みとし、10,000km 程度の地域間の通話では約 225ms と試算しています。
レイテンシと区別して扱う概念にジッタがあります。レイテンシが「遅延の絶対値」であるのに対し、ジッタは「遅延のばらつき」を指します。レイテンシが一定であれば通話品質は安定しますが、ジッタが大きいとパケットの到着間隔が不規則になり、音声が途切れたり歪んだりします。QoS 設定では、レイテンシの最小化とジッタの抑制の両方を考慮する必要があります。帯域幅が十分でも、ルーターの処理遅延やネットワークの混雑でレイテンシが増えることがあるため、VoIP 導入時はネットワーク全体の設計が重要です。