レイテンシとは、データが送信元から受信先に到達するまでの遅延時間です。電話通信では、話した声が相手に届くまでの時間差として体感され、通話品質を左右する最も重要な指標の一つです。ITU-T の勧告 G.114 では、片道 150ms 以下であれば快適な通話が可能とされています。
レイテンシの体感は段階的に悪化します。0〜150ms では自然な会話が成立し、遅延をほとんど意識しません。150〜300ms では相手の反応がわずかに遅れて感じられ、会話のテンポに違和感が生じます。300〜400ms では相手と同時に話し始める「かぶり」が頻発し、400ms を超えると会話のキャッチボールが困難になります。衛星電話では地球と静止衛星間の往復で約 540ms の遅延が発生するため、独特の「間」が生まれます。
VoIP 通話のレイテンシは、複数の要因の合計で決まります。コーデックによる音声の符号化・復号化に 5〜40ms、パケットがネットワークを伝送する時間に 10〜100ms (距離に依存)、受信側のジッタバッファ (パケットの到着順序のばらつきを吸収するバッファ) に 20〜80ms が加わります。国内通話であれば合計 50〜100ms 程度に収まりますが、国際通話では物理的な距離と経由するルーターの数が増えるため 200ms を超えることもあります。
レイテンシと混同されやすい概念にジッタがあります。レイテンシが「遅延の絶対値」であるのに対し、ジッタは「遅延のばらつき」を指します。レイテンシが一定であれば通話品質は安定しますが、ジッタが大きいとパケットの到着間隔が不規則になり、音声が途切れたり歪んだりします。QoS 設定では、レイテンシの最小化とジッタの抑制の両方を考慮する必要があります。帯域幅が十分でもルーターの処理遅延やネットワーク混雑でレイテンシが増大するため、VoIP 導入時はネットワーク全体の設計が重要です。