コーデック (Codec) とは、Coder/Decoder の略で、音声データを圧縮 (符号化) して送信し、受信側で復元 (復号) する技術です。電話通信では、通話品質と必要な通信帯域幅のトレードオフを決定する重要な要素であり、コーデックの選択が通話の聞こえ方を直接左右します。
代表的な音声コーデックを帯域と品質で整理すると、以下のようになります。G.711 は固定電話の標準コーデックで、64kbps の帯域を使い、300〜3,400Hz の音声帯域をカバーします。音質は良好ですが帯域消費が大きいため、回線に余裕がある環境向けです。G.729 は IP 電話で広く使われるコーデックで、8kbps と G.711 の 8 分の 1 の帯域で通話可能です。帯域節約に優れますが、音質はやや劣ります。AMR-WB (G.722.2) は VoLTE の標準コーデックで、50〜7,000Hz の広帯域音声 (HD Voice) を実現し、従来の電話より格段にクリアな音質を提供します。
近年は次世代コーデックの普及が進んでいます。EVS (Enhanced Voice Services) は 3GPP が策定した最新の音声コーデックで、50〜14,400Hz の超広帯域音声 (Super HD Voice) に対応し、音楽や環境音も高品質に伝送できます。5G の VoNR で採用が進んでいます。Opus は IETF が策定したオープンソースのコーデックで、6kbps〜510kbps の広い範囲で動作し、音声からフルバンド音楽まで 1 つのコーデックでカバーできます。WebRTC (ブラウザベースの通話) の標準コーデックとして採用されています。
コーデックの選択はレイテンシにも影響します。G.711 は符号化処理が単純なため遅延が小さい (約 0.125ms) のに対し、G.729 は複雑な圧縮処理のため約 15ms の遅延が加わります。VoIP 環境では、ネットワークの帯域に余裕があれば G.711、帯域が限られる場合は G.729 を選択するのが一般的です。QoS 設定と合わせて、コーデックの選択が通話品質を決定します。