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通報・法的対処

ストーカー電話への法的対処

約 9 分で読めます

電話によるストーカー行為の実態

電話を使ったつきまとい行為は、非通知電話による無言電話、拒まれた後も続く執拗な着信、脅迫的な内容の通話、深夜・早朝の繰り返し発信など、さまざまな形で行われます。着信のたびに緊張を強いられるため精神的な負担は大きく、睡眠や仕事に支障が出ることも珍しくありません。「相手が元交際相手だから」と我慢を重ねるほど記録が散逸し、後から法的手続きを取りにくくなります。

ストーカー規制法 (正式名称: ストーカー行為等の規制等に関する法律) は 2000 年に成立し、その後の改正で規制の範囲が広げられてきました。現行法では電話やメール、SMS、SNS を使った行為に加え、承諾を得ずに GPS 機器等で相手の位置情報を取得する行為も規制されています (法 2 条 3 項)。本記事では、電話によるストーカー行為に対して利用できる法的手段を、手続きの流れに沿って解説します。ストーカー電話への基本的な対処法もあわせてご確認ください。

ストーカー規制法の適用条件

「つきまとい等」に該当する電話行為

ストーカー規制法では、特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情、またはそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で行われる以下の電話行為を「つきまとい等」として規制しています。

  • 面会・交際の要求 (法 2 条 1 項 3 号) - 電話で面会や交際など、義務のないことを行うよう要求する行為
  • 無言電話 (同 5 号) - 電話をかけて何も告げずに切る行為
  • 拒否後の連続した電話 (同 5 号) - 拒まれたにもかかわらず、連続して電話をかける行為。深夜・早朝に繰り返される発信もここに含まれます
  • 著しく粗野・乱暴な言動 (同 4 号) - 電話で怒鳴る、暴言を吐くなどの言動をとる行為
  • 名誉を害する告知 (同 7 号) - 電話で名誉を害する事項を告げる行為

これらの行為が同一の相手に対して反復されると「ストーカー行為」となり、刑事罰の対象になります (法 18 条・1 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金)。ただし、このうち面会・交際の要求 (3 号) と著しく粗野・乱暴な言動 (4 号) は、身体の安全、住居等の平穏もしくは名誉が害され、または行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われた場合に限られます (法 2 条 4 項)。1 回だけの行為は「つきまとい等」にとどまり、それ自体では刑事罰の対象になりません。ただし、更に反復して同じ行為をするおそれがあると認められる場合は、1 回の行為でも次に述べる警告の対象になります (法 4 条 1 項)。

適用の前提条件

ストーカー規制法が適用されるためには、行為者の動機が「恋愛感情その他の好意の感情」またはその「怨恨の感情」に基づいていることが必要です。単なる営業電話や嫌がらせ目的の電話は、ストーカー規制法の直接の対象外となります。ただし、営業電話は特定商取引法、嫌がらせ電話は刑法の脅迫罪や迷惑防止条例など、他の法律で対処可能です。迷惑電話のブロック方法で、まず物理的な防御策を講じることも重要です。

警告の手続き

警察への相談

ストーカー電話の被害を受けたら、まず最寄りの警察署の生活安全課に相談してください。相談時に以下の証拠をそろえておくと、被害の状況を正確に伝えられます。

  • 着信履歴のスクリーンショット (日時と番号がわかるもの)
  • 通話録音データ (ある場合)
  • 嫌がらせの記録ノート (日時、内容、頻度を時系列で整理)
  • 相手との関係性を示す資料 (元交際相手の場合は交際期間など)

電話嫌がらせの証拠の残し方を参考に、相談前に証拠を体系的に整理しておきましょう。

警告の発出

警察本部長等 (警視総監・道府県警察本部長・警察署長) は、被害者の申出により、または職権で、行為者に対して「更に反復して同じ行為をしてはならない」旨の警告を出すことができます (法 4 条 1 項)。警告そのものに違反した場合の刑罰は法律に定められていませんが、公的な警告を受けたことで行為が止まる例もあります。それでも収まらない場合は、次に述べる禁止命令等へ進みます。

警告が出されるまでの期間は事案によって異なります。身体の安全に危険が及んでいると感じるときは警告を待たず、その場で 110 番通報してください。緊急の必要がある場合には、警告を経ずに禁止命令等が出される仕組みも用意されています。

禁止命令の手続き

禁止命令とは

禁止命令等は、都道府県公安委員会が出す行政命令です。ストーカー規制法が禁じる行為 (法 3 条違反) があり、行為者が更に反復するおそれがあると認められるときに、被害者の申出により、または職権で発出されます (法 5 条 1 項)。警告を経ていることは要件ではないため、警告を飛ばして禁止命令等に進むこともできます。公安委員会は原則として行為者から意見を聴く聴聞を行いますが、被害者の身体の安全などを守るために緊急の必要があるときは、聴聞を行わずに命令を出し、その日から起算して 15 日以内に意見の聴取を行う扱いです (法 5 条 2 項・3 項)。

禁止命令等に違反した場合の刑事罰は 2 段に分かれます。反復禁止の命令 (法 5 条 1 項 1 号) に違反してストーカー行為をした場合は 2 年以下の拘禁刑または 200 万円以下の罰金 (法 19 条 1 項)、それ以外の禁止命令等違反は 6 月以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金 (法 20 条) です。

禁止命令の内容

命じられる内容は、①更に反復して同じ行為をしてはならないこと、②反復を防止するために必要な事項の 2 つで構成されます (法 5 条 1 項各号)。②として命じられるのは、たとえば次のような事項です。

  • 被害者への電話、メール、SNS での連絡の禁止
  • 被害者の自宅、職場、学校周辺への接近の禁止
  • 被害者の関係者 (家族、友人、同僚) への接触の禁止

禁止命令等の効力は、出された日から起算して 1 年間です。継続の必要が認められる場合は、被害者の申出により期間が延長されます (法 5 条 8 項・9 項)。

禁止命令の申立て手順

禁止命令等は、行為の相手方である被害者本人の申出によって発出を求めることができます (法 5 条 1 項)。申出の窓口は警察署で、警察が事実関係と証拠を確認したうえで公安委員会の手続きに進みます。被害者が準備すべきことは、証拠の提供と被害状況の具体的な説明です。申出をしたのに禁止命令等が出されなかった場合は、その理由が書面で通知されます (法 5 条 7 項)。通話録音の法的ガイドを参考に、証拠を適切に保全してください。

保護命令と刑事告訴

DV 防止法に基づく保護命令

ストーカー行為者が配偶者や元配偶者、同居の交際相手である場合は、DV 防止法 (配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律) に基づく保護命令を裁判所に申し立てることができます。保護命令には以下の種類があります。

  • 接近禁止命令 - 被害者への接近を 1 年間禁止
  • 電話等禁止命令 - 電話、メール、SNS での連絡を禁止
  • 子への接近禁止命令 - 被害者の子への接近を禁止
  • 親族等への接近禁止命令 - 被害者の親族等への接近を禁止

保護命令に違反した場合は、2 年以下の拘禁刑または 200 万円以下の罰金が科されます (2024 年施行の改正による現行の法定刑)。DV 防止法の保護命令は裁判所が発出するため、ストーカー規制法の禁止命令 (公安委員会が発出) とは手続きが異なります。

刑事告訴

ストーカー行為が反復して行われた場合、ストーカー規制法違反として刑事告訴が可能です。ストーカー行為罪の法定刑は 1 年以下の拘禁刑または 100 万円以下の罰金です (法 18 条)。反復禁止の禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合は、2 年以下の拘禁刑または 200 万円以下の罰金に加重されます (法 19 条 1 項)。法改正により、ストーカー行為罪は親告罪から非親告罪に変更され、被害者の告訴がなくても検察が起訴できるようになりました。

刑事告訴を行う場合は、弁護士に依頼して告訴状を作成してもらうことをお勧めします。告訴状には、被害の事実、証拠、行為者の特定情報を記載する必要があります。

被害者が取るべき具体的な行動

安全確保を最優先に

法的手続きと並行して、自身の安全確保を最優先にしてください。

  • 電話番号の変更を検討する (キャリアに相談)
  • 非通知着信の拒否設定を有効にする
  • 迷惑電話フィルターサービスを導入する
  • 自宅の防犯対策を強化する (防犯カメラ、二重ロックなど)
  • 信頼できる人に状況を共有し、孤立しない

電話番号のプライバシー保護を徹底し、番号の再流出を防ぐことも重要です。着信拒否設定と転送電話を組み合わせれば、特定番号からの着信を自動的に遮断しつつ、重要な電話は受けられる環境を構築できます。

相談窓口の活用

  • 警察 (110 番 / #9110) - 緊急時は 110 番、相談は #9110
  • 配偶者暴力相談支援センター - DV に関する相談と一時保護
  • 法テラス (0570-078374) - 無料法律相談と弁護士費用の立替
  • よりそいホットライン (0120-279-338) - 生活上の困りごとを幅広く受け付ける電話相談窓口

迷惑電話の通報先と届出手順も参考に、状況に応じて複数の窓口を使い分けてください。

まとめ

電話によるストーカー行為に対しては、ストーカー規制法に基づく警告・禁止命令、DV 防止法に基づく保護命令、刑事告訴など、複数の法的手段が用意されています。被害を受けたら一人で抱え込まず、警察や弁護士に速やかに相談してください。証拠の収集と保全を日頃から行っておけば、警告や禁止命令等の手続きを進めやすくなります。安全確保を最優先にしながら、法的手段を適切に活用して自分自身を守りましょう。

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よくある質問

電話のストーカー行為はストーカー規制法で取り締まれますか?

はい。無言電話、執拗な着信、拒否しても繰り返し電話をかける行為は、恋愛感情等に基づくものであればストーカー規制法の「つきまとい等」に該当します。反復して行われた場合は「ストーカー行為」として刑事罰の対象になります。

警告と禁止命令の違いは何ですか?

警告は警察本部長等が行為者に「更に反復して同じ行為をしてはならない」と告げるもので、警告自体に違反した場合の刑罰は定められていません。禁止命令等は公安委員会が出す行政命令で、反復禁止の命令に違反してストーカー行為をした場合は 2 年以下の拘禁刑または 200 万円以下の罰金、それ以外の禁止命令等違反は 6 月以下の拘禁刑または 50 万円以下の罰金が科されます。

ストーカー電話の被害を受けたら最初に何をすべきですか?

まず着信履歴のスクリーンショットと通話録音で証拠を保全してください。次に最寄りの警察署の生活安全課に相談し、被害状況を報告します。緊急性が高い場合は 110 番に通報してください。

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