公的機関なりすまし詐欺の現状
公的機関を装う電話詐欺は、権威への信頼を悪用する極めて悪質な手口です。警察、税務署、年金事務所、裁判所、入国管理局など、さまざまな機関を騙り、「逮捕状が出ている」「未納税金がある」「年金の還付がある」といった内容で被害者を動揺させます。自動音声 (ロボコール) による大量発信や、発信者番号偽装で公的機関の番号を着信画面に表示させる手口も確認されています。
公的機関を名乗ることで被害者の警戒心を解き、「従わなければ大変なことになる」という恐怖心を植え付けるのがこの手口の本質です。特に法律や行政手続きに詳しくない人ほど、「本当に問題があるのかもしれない」と不安に駆られ、詐欺師の指示に従ってしまいます。
公的機関なりすまし詐欺の主な手口
詐欺グループは、名乗る機関と口実を組み替えながら電話をかけてきます。よく使われるパターンを知っておくことが、被害防止に直結します。
警察なりすまし
「あなたの口座が犯罪に使われている。資産を保護するため別口座に移す必要がある」「あなた名義のキャッシュカードが不正に使われた。警察官が回収に伺う」といった内容で、金銭やキャッシュカードを騙し取ります。実際に自宅を訪問する「受け子」が関与するケースもあり、被害額が高額になりやすい手口です。
税務署なりすまし
「確定申告の不備がある。追徴課税を本日中に納付しなければ財産を差し押さえる」「還付金の受取手続きが必要。ATM で操作してください」と脅迫的な内容で連絡します。還付金の受取手続きを口実にする電話は、2024 年 (令和 6 年) の還付金詐欺の月別認知件数で 4 月が最も多く、3 月・5 月が続きました (警察庁)。確定申告の期限前後から春先にかけては特に警戒してください。
年金事務所なりすまし
「年金の過払い分を返金する。ATM で手続きできる」「年金の受給資格に問題がある。確認のため個人情報を教えてほしい」と称し、ATM 操作の誘導や個人情報の収集を行います。年金の支給日 (偶数月の 15 日) に合わせて連絡することで、話に信用性があるように見せかけます。
裁判所なりすまし
「訴訟が提起されている。和解金を支払えば取り下げられる」「出廷命令が出ている。連絡がなければ逮捕される」といった内容で、法的措置への恐怖心を煽ります。裁判所が電話で和解金の支払いを求めることは絶対にありません。
入国管理局なりすまし
外国人居住者を狙い、「在留資格に問題がある」「ビザの更新手続きに不備がある」と連絡します。在留資格の取消しや強制送還への恐怖心を利用し、手数料名目で金銭を騙し取ります。
見破るための重要なポイント
公的機関を装う詐欺電話を見破るために、以下の事実を必ず覚えておいてください。これらは例外なく適用される原則です。
- 公的機関が電話で金銭の支払いを求めることはない: 税金や罰金の納付は書面で通知され、指定の方法で支払う
- ATM 操作を指示することはない: 還付金の受取や税金の納付を ATM で行う手続きは存在しない
- 逮捕や差し押さえを電話で予告することはない: 法的措置は書面 (令状) に基づいて行われる
- 暗証番号やキャッシュカードを求めることはない: 警察官がキャッシュカードを預かることは絶対にない
- プリペイドカードでの支払いを求めることはない: コンビニでプリペイドカードを購入させる手口は詐欺の確実な証拠
確認の手順
非通知や見慣れない番号からの不審な電話を受けた場合は、以下の手順で対処してください。
- 電話を切る: 不審に感じたら、理由を告げずに電話を切る。相手が怒っても気にしない
- 正規の番号に確認する: 公式サイトや電話帳に掲載された番号に自分からかけ直す。電話の相手が教えた番号にはかけない
- 番号を検索する: 出んわなどの電話番号検索サービスで発信元番号を検索し、迷惑電話や詐欺報告の有無を確認する
- 家族に相談する: 一人で判断せず、家族や信頼できる人に状況を話して意見を求める
- 警察に相談する: 判断に迷う場合は、警察相談ダイヤル (#9110) に電話して相談する
自動音声 (ロボコール) 詐欺への対策
「こちらは○○警察です。あなたに関する重要な連絡があります。1 を押してください」といった自動音声は、詐欺の典型です。ボタンを押すとオペレーターにつながり、巧みな話術で個人情報や金銭を騙し取られます。
自動音声による詐欺電話は、短時間で大量の番号に発信できるため、被害が広範囲に及びます。公的機関が自動音声で個人に電話をかけることは通常ありません。自動音声の電話には一切応答せず、即座に切断してください。着信番号を出んわで検索し、詐欺報告があれば着信拒否リストに登録しましょう。
被害に遭った場合の対応
金銭を支払ってしまった場合は、直ちに振込先の金融機関に連絡して口座凍結を依頼してください。キャッシュカードを渡してしまった場合は、銀行に連絡してカードの利用停止と口座の凍結を行います。個人情報を伝えてしまった場合は、なりすまし被害を防ぐため、関連する機関 (銀行、カード会社、年金事務所など) に報告しましょう。警察 (#9110) と消費者ホットライン (188) への相談も忘れずに行ってください。
被害に見られる傾向
公的機関を装う詐欺は、権威を盾に短時間で判断を迫るため、一度信じてしまうと被害が大きくなりやすい類型です。被害の傾向として、次の点が繰り返し指摘されています。
- 高齢者に集中しやすい: 特殊詐欺の被害者のうち 65 歳以上が占める割合は、2023 年 (令和 5 年) で 78.4% でした (警察庁)
- 入口は電話: 同じ 2023 年 (令和 5 年) に、犯人からの最初の接触手段が電話だった割合は 77.5% を占めています (警察庁)
- 還付金を口実にする型が目立つ: 税金や保険料の還付を持ち出して ATM 操作へ誘導する型は、公的機関を名乗る電話の代表的なパターンです
- 時期による偏り: 還付金詐欺の認知件数は 2024 年 (令和 6 年) の月別で 4 月が最多 (437 件)、3 月 (391 件)・5 月 (390 件) が続き、12 月が最も少ない 249 件でした (警察庁)
高齢者ほど被害に遭いやすい背景には、行政手続きに不慣れなことに加え、「従わなければ大変なことになる」という恐怖心が冷静な判断を妨げる構造があります。年末は件数が落ち込む一方で春先に集中するため、「年末だけ注意すればよい」という思い込みは危険です。
公的機関の正しい連絡方法を知る
公的機関が個人に連絡する際の正しい方法を知っておくことで、詐欺電話との違いを見分けやすくなります。
- 税務署: 税金に関する通知は書面で届く。電話で還付手続きや追徴課税の支払いを求めることはない
- 年金事務所: 年金に関する重要な連絡は書面で届く。電話で個人情報や口座情報を求めることはない
- 警察: 逮捕状や捜査令状は書面で提示される。電話で金銭の支払いやキャッシュカードの提出を求めることはない
- 裁判所: 訴訟に関する通知は特別送達 (書留郵便) で届く。電話で和解金の支払いを求めることはない
- 市区町村役場: 給付金や還付金の案内は書面で届く。ATM 操作を指示することはない
不審な電話を受けた場合は、電話の相手が教えた番号ではなく、公式サイトや電話帳に掲載された正規の番号に自分からかけ直して確認してください。
関連する対策として、税金還付詐欺の対策、振り込め詐欺の対策、発信者番号偽装のリスクもあわせてご確認ください。
高齢者を守るための家族の取り組み
公的機関なりすまし詐欺から高齢の家族を守るために、以下の取り組みを実践しましょう。
- 定期的な情報共有: 新たに報じられた詐欺手口を家族間で共有し、「公的機関が電話で金銭を求めることはない」というルールを繰り返し伝える
- 合言葉の設定: 家族間で緊急時の合言葉を決めておき、不審な電話を受けた際の本人確認に使用する
- 防犯機能付き電話機の導入: 着信時に自動警告メッセージを再生し、通話を録音する機能付きの電話機を導入する
- ATM 利用限度額の引き下げ: 高齢者の口座は 1 日の振込限度額を低く設定しておく
相談窓口一覧
- 警察相談専用電話: #9110
- 消費者ホットライン: 188 (いやや)
- 法テラス: 0570-078374
- 各金融機関の振り込め詐欺相談窓口