衛星電話とは、人工衛星を経由して通信を行う電話です。地上の基地局に依存しないため、山岳地帯、海上、砂漠、極地など携帯電話の圏外でも通話が可能です。災害時に地上の通信インフラが壊滅した場合でも、衛星電話は機能し続けるため、「最後の通信手段」として位置づけられています。
日本で利用できる主な衛星電話サービスは 3 つあります。イリジウムは 66 基の低軌道衛星 (LEO、高度約 780km) で地球上のほぼ全域をカバーし、極地でも通話可能です。スラーヤは静止衛星 (GEO、高度約 36,000km) を使い、アジア・中東・アフリカを中心にカバーします。インマルサットも静止衛星を使い、海事通信に強みを持ちます。LEO 衛星は地球に近いためレイテンシが約 20〜40ms と小さく、自然な会話が可能です。GEO 衛星は高度が高いためレイテンシが約 540ms と大きく、会話に独特の「間」が生じます。
衛星電話の導入は、自治体や企業の BCP (事業継続計画) で加速しています。東日本大震災では地上の通信インフラが広範囲で壊滅し、衛星電話が唯一の通信手段となった地域がありました。この教訓から、自治体の防災拠点、病院、電力会社、ガス会社などのライフライン事業者で衛星電話の配備が進んでいます。端末価格は 10〜30 万円、通話料は 1 分あたり 100〜300 円程度と一般の携帯電話より高額ですが、災害時の通信確保という観点では代替手段がありません。
近年は衛星通信の民生利用が急速に広がっています。Apple の iPhone 14 以降では衛星経由の緊急 SOS 機能が搭載され、携帯電話の圏外でも緊急通報が可能になりました。SpaceX の Starlink は Direct to Cell サービスを開始し、通常のスマートフォンで衛星経由のテキストメッセージや通話が可能になる計画を進めています。緊急通報番号と合わせて、緊急時の電話番号ガイドで災害時の通信手段を確認しておきましょう。