プッシュホンは、回転式ダイヤルに代わってボタン (テンキー) で番号を入力する電話機です。NTT が 1969 年に日本で初めて導入し、「プッシュホン」は NTT の登録商標です。正式には「プッシュ式電話機」と呼ばれ、ボタンを押すと DTMF (Dual-Tone Multi-Frequency) 信号と呼ばれる 2 つの周波数の音が発信され、交換機がこの音を検知して番号を認識します。
プッシュホンの登場は電話の使い方を大きく変えました。ダイヤル式では「0」を回すのに約 1 秒かかりましたが、プッシュ式ではボタンを押すだけで瞬時に入力できます。さらに重要なのは、DTMF 信号が通話中にも送信できる点です。これにより、IVR (自動音声応答) システムでの番号選択、テレホンバンキングの暗証番号入力、チケット予約の座席選択など、電話を使ったインタラクティブなサービスが実現しました。
現在のスマートフォンにもプッシュホンの技術は受け継がれています。通話中に表示されるテンキーパッドは DTMF 信号を送信するためのもので、コールセンターのIVR メニューで「1 を押してください」と案内されたときに使います。スマートフォンの通話はデジタル (VoLTE) ですが、DTMF 信号は互換性のために維持されています。
ダイヤル式電話機は 2024 年現在もごく少数が現役で使われていますが、IVR や各種自動サービスに対応できないため、実用上はプッシュ式への移行が推奨されます。電話機の進化の歴史でダイヤル式からプッシュ式への変遷を詳しく解説しています。