FAX (ファクシミリ) とは、電話回線を使って文書や画像のコピーを遠隔地に送受信する通信手段です。送信側で原稿をスキャンし、画像データを電話回線経由で受信側に送り、受信側で印刷します。通信手順を ITU-T T.30、画像の符号化を T.4 で定めた G3 方式が標準で、標準的な設定では A4 1 枚あたり 1 分前後が目安です。Super G3 と呼ばれる方式では通信速度が上がり、送信時間はさらに短くなります。
日本は業務用途で FAX の利用が根強く残っている国として知られています。官公庁、医療機関、不動産業界、法律事務所などでは業務フローに FAX が組み込まれており、急速な廃止は難しい状況です。その背景には、手書き署名の送付、紙ベースの業務慣行、法的書類の原本性確保といった日本固有の事情があります。コロナ禍では保健所の感染者報告が FAX で行われていたことが問題視され、デジタル化の遅れが浮き彫りになりました。
2010 年代以降はインターネット FAX (クラウド FAX) サービスも普及しました。eFax のようなインターネット FAX サービスを使えば、メールで FAX を送受信できるため、FAX 機を持たなくても利用可能です。受信した FAX は PDF として保存されるため、ペーパーレス化にも貢献します。PSTN から IP 網への移行後も FAX 通信は継続されますが、VoIP 環境では音声用のコーデックが FAX 信号を正しく伝送できない場合があり、T.38 プロトコル (FAX over IP) への対応が必要になることがあります。FAX の送信エラーが頻発する場合は、回線が IP 化されていないか確認するのが最初のトラブルシューティングです。ビジネス電話番号ガイドで FAX 番号の管理方法も確認しておきましょう。
FAX の原理は 1843 年にスコットランドの発明家アレクサンダー・ベインが考案したもので、日本では 1930 年代に新聞社の写真電送で実用化され、1980 年代に家庭用 FAX 機が普及しました。運用面では、宛先番号の押し間違いによる機密文書の誤送信、受信トレイに放置された文書の第三者閲覧、通信が暗号化されないことによる傍受リスクといったセキュリティ上の弱点があるため、送信前の番号確認や受信文書の管理ルールが重要です。