ポケベル (ポケットベル) は、電波で数字やカナ文字のメッセージを受信できる携帯型の無線呼び出し端末です。NTT が 1968 年にサービスを開始し、当初はビジネスマンの連絡手段として普及しました。端末自体には発信機能がなく、公衆電話や固定電話からポケベルの番号に電話をかけ、プッシュボタンでメッセージを入力して送信する仕組みでした。
1990 年代前半、ポケベルは女子高生を中心とした若者文化の象徴となりました。数字の語呂合わせでメッセージを送る「ベル友」文化が生まれ、「0840」(おはよう)、「0906」(遅れる)、「14106」(愛してる) といった暗号的なコミュニケーションが流行しました。1996 年にはポケベルの契約数が約 1,078 万件に達し、ピークを迎えました。
しかし、携帯電話の急速な普及により、ポケベルは急速に衰退しました。携帯電話は双方向通信が可能で、音声通話もできるため、一方向のメッセージ受信しかできないポケベルの優位性は失われました。NTT ドコモは 2007 年にポケベルサービスを終了し、最後まで残っていた東京テレメッセージも 2019 年 9 月にサービスを終了しました。
ポケベルの歴史的意義は、「いつでもどこでもメッセージを受け取れる」というモバイルコミュニケーションの原型を作った点にあります。数字の語呂合わせ文化は、後の携帯メールの絵文字文化や、LINE スタンプ文化の源流とも言えます。また、ポケベルの周波数帯 (280MHz 帯) は現在、防災行政無線のデジタル化に転用されています。消えた電話番号の歴史や電話機の進化の歴史でポケベルの時代を振り返ることができます。