番号偽装アプリとは、発信時に相手の端末に表示される電話番号を任意の番号に変更できるアプリケーションです。英語では Caller ID Spoofing App と呼ばれ、海外では SpoofCard、SpoofTel、Dingtone などが知られています。VoIP 技術を利用して発信者番号を書き換える仕組みで、技術的には比較的容易に実現できます。
正当な用途も存在します。企業が社員の個人携帯から発信する際に会社の代表番号を表示させるケース、仮想電話番号サービスで取得した番号を表示させるケース、プライバシー保護のために個人番号を隠すケースなどです。しかし、電話詐欺や嫌がらせへの悪用が深刻な社会問題となっています。警察や銀行の番号を偽装して信用させる手口は、振り込め詐欺の常套手段であり、音声クローン技術と組み合わせることで、さらに巧妙な詐欺が可能になっています。
日本の法規制では、不正な目的での発信者番号偽装は電気通信事業法に抵触する可能性があります。ただし、偽装アプリ自体の所持や使用を直接禁止する法律は現時点では存在せず、詐欺や脅迫などの犯罪行為に使用された場合に、その犯罪行為として処罰される形です。アメリカでは Truth in Caller ID Act (2009 年) により、詐欺目的での番号偽装は連邦法違反となり、1 件あたり最大 10,000 ドルの罰金が科されます。
技術的な対策として、STIR/SHAKEN プロトコルの導入が進んでいます。これは通信事業者が発信者番号にデジタル署名を付与し、着信側の事業者が署名を検証することで、番号が正当なものかどうかを判定する仕組みです。アメリカでは 2021 年から大手キャリアに導入が義務化されており、日本でも総務省が導入を検討しています。偽装された番号からの着信を受けた場合は、表示番号を信用せず、公式サイトで正規の連絡先を確認してからかけ直すことが重要です。発信者番号偽装のリスクで詳しく解説しています。