STIR/SHAKEN とは、発信者番号の正当性を暗号技術 (デジタル署名) で検証するプロトコルです。STIR (Secure Telephone Identity Revisited、IETF RFC 8224/8225) と SHAKEN (Signature-based Handling of Asserted information using toKENs、ATIS 規格) の 2 つの規格で構成されます。発信者番号偽装による詐欺被害を技術的に防ぐために策定された標準規格です。
仕組みとしては、発信側の通信事業者が発信者番号にデジタル署名 (公開鍵暗号方式) を付与し、着信側の事業者がその署名を検証します。検証結果は 3 段階で表示されます。A (Full Attestation) は発信者が正当な番号の利用者であることを事業者が完全に確認済み、B (Partial Attestation) は発信元は確認済みだが番号の正当性は未確認、C (Gateway Attestation) は発信元が海外など検証が困難なケースです。着信側の端末には「Verified Call (検証済み通話)」などの表示がされ、利用者が偽装電話を見分ける手がかりになります。
アメリカではロボコール対策として通信事業者への導入が進められました。一方で、どの国でも同じ仕組みが動いているわけではありません。導入の状況や判断は国ごとに大きく異なるため、海外からの着信が検証済みかどうかを一律に期待することはできません。
日本では、署名検証の仕組みではなく、他人の番号を送信すること自体を規制する制度と事業者間のガイドラインで対応してきました。一般社団法人電気通信事業者協会 (TCA) は「発信者番号偽装表示対策検討部会」を設け、総務省が 2008 年 4 月 21 日に公表した「異なる電気通信番号の送信の防止に係る省令の取り扱い方針」の運用に係るガイドライン (第 2 版) と、「発信者番号偽装表示対策ガイドライン」(第 3.1 版) を定めています (2026 年 8 月時点)。番号偽装アプリや海外からの偽装電話による振り込め詐欺の被害は続いており、表示された番号だけを信用しない対応が引き続き必要です。なお STIR/SHAKEN は SIP (IP 電話) での通話設定に署名を載せる仕組みで、日本の電話網は NTT を中心とした構造でアメリカとは事業者間の接続形態も異なるため、そのまま移植できるものではありません。発信者番号偽装の手口と見破り方で偽装への対処を確認できます。