VPN (Virtual Private Network / 仮想プライベートネットワーク) とは、インターネット上に暗号化された仮想的な専用回線 (トンネル) を構築し、通信の安全性とプライバシーを高める技術です。暗号化されるのは自分の端末と VPN サーバーの間の区間で、そこから先は通常のインターネットを通ります。つまり VPN が守るのは「手元から VPN サーバーまでの経路」であって、通信の全区間ではありません。この区間の切り分けを押さえておくと、VPN で防げること・防げないことの線引きを間違えずに済みます。
電話に関連する VPN の用途は主に 2 つあります。第一に、公衆 Wi-Fi での通信保護です。カフェや空港の誰でも使える Wi-Fi は、同じネットワークに接続している他人から通信をのぞかれる可能性が残ります。ただし現在のウェブサイトやアプリはそれ自体が暗号化された通信を使うのが標準で、VoIP アプリの通話内容も多くは暗号化されています。VPN を足して増える効果は、接続先のアドレスや通信相手の一覧といった「誰とやり取りしているか」をその場のネットワーク管理者や同席者から隠せる点にあります。「VPN を入れたから何をしても安全」ではなく、隠せる情報が一段増える、と理解するのが実態に近いです。
第二に、企業のリモートワーク環境です。自宅から会社の内線電話システム (PBX) にアクセスする際、VPN で社内ネットワークに接続することで、内線通話や社内システムを安全に利用できます。クラウド型の PBX ではインターネット経由でリモート内線が使える構成もあり、その場合は VPN を挟まない運用もありますが、セキュリティポリシーの厳しい企業では VPN 接続を必須としています。なお VPN を経由すると通信が遠回りになるため、遅延が増えて通話の声が返ってくるまでの間が長くなることがあります。内線通話だけが不調なときは、VPN の経路そのものを疑う価値があります。
VPN サービスには無料と有料があります。無料のものは通信量や速度に制限が置かれていることが多く、運営者がユーザーの通信履歴を収集して広告や第三者への提供に使っているケースも報告されています。有料サービスは「ノーログポリシー」(通信記録を保存しない方針) を掲げているものが一般的ですが、記録を残していないことを利用者側から確かめる手立てはありません。選ぶときは、その方針を第三者の監査で確認しているか、運営会社の所在と連絡先が明記されているか、解約と返金の条件が読み取れるかといった、外から検証できる点で比べるのが現実的です。電話番号のプライバシー管理も参考にしてください。