暗号化とは、通信内容を数学的なアルゴリズムで変換し、正しい鍵を持つ受信者だけが元の内容を復元できるようにする技術です。電話の世界では、通話音声の盗聴防止、SMS メッセージの保護、通信経路上のデータ保護に使われています。
携帯電話の通話は、2G (GSM) の時代は暗号方式が弱く、市販の受信機と公開された解読手法で傍受できる状態でした。3G で暗号強度が向上し、4G の VoLTE では強固な暗号化が標準になりました。5G の仕様ではさらに、加入者を識別する番号そのものを暗号化して送る仕組みが取り入れられ、基地局を装った装置による追跡がしにくくなっています。ただし、どの世代でも通信事業者の設備内では音声が復号されるため、事業者や法的な権限を持つ機関は通話内容にアクセスできます。
エンドツーエンド暗号化 (E2EE) は、送信者と受信者の端末間で暗号化が完結し、通信事業者やサービス提供者でさえ内容を読めない方式です。LINE の「Letter Sealing」、WhatsApp、Signal などのメッセージアプリがこの方式を採用しています。電話回線を使う通常の通話は E2EE ではないため、内容を知られたくない相談は、これらのアプリの通話機能に切り替えるという判断になります。
実務で誤解しやすいのは、暗号化が守ってくれる範囲です。第一に、E2EE であっても端末そのものを乗っ取られれば復号後の画面を読まれるため、端末のロックと更新のほうが先に効きます。第二に、クラウドへのトーク履歴のバックアップ、ロック画面の通知プレビュー、スクリーンショットは暗号化された経路の外側に出た情報で、漏れるとすればここからです。第三に、暗号化は通信の中身を隠す技術であって、相手が本人であることは保証しません。番号を偽装した着信 (発信者番号偽装) に暗号化は無力です。
暗号化に関連する脅威としては、盗聴、中間者攻撃 (通信の途中に割り込み、双方になりすまして内容を中継しながら盗み見る攻撃)、公衆 Wi-Fi での通信傍受があります。公衆 Wi-Fi では、接続先のサイトが HTTPS に対応していれば中身は保護されますが、どのサイトにつないだかといった通信の外形は見えますし、正規のアクセスポイントを装った電波につながされる危険も残ります。電話番号のプライバシー管理や通話録音の法的ガイドも参考にしてください。