電話交換機とは、発信者と着信者の電話回線を接続 / 切り替えする通信設備です。電話網の中核を担い、ダイヤルされた番号を解析して最適な経路を選択 (ルーティング) し、通話を確立します。PSTN (公衆交換電話網) の心臓部ともいえる存在です。
電話交換機の歴史は、電話の歴史そのものです。電話網の始まりは、人間のオペレーター (交換手) が手動でプラグとジャックを差し替えて回線をつなぐ手動交換でした。日本では 1890 年に、東京と横浜の両市および両市間で、磁石式手動交換機を用いた電話交換業務が始まりました。1926 年には交換手の操作を自動化した自動交換機の導入が始まり、ダイヤルを回すだけで相手につながるようになりました。その後、ステップバイステップ式からクロスバ交換機へ、さらに電子交換機 / ディジタル交換機へと進化し、処理速度と収容回線数が高まりました。手動交換機は自動交換機が普及した後も小規模な交換局で使われ続け、電話の全国完全自動化に至る 1979 年まで、農村や離島の通信を支えました。
IP 網を前提とする電話網では、交換機の役割をソフトスイッチ (ソフトウェアベースの交換機) が担います。従来のハードウェア交換機が専用回路で回線を物理的に接続していたのに対し、ソフトスイッチは汎用サーバー上のソフトウェアで通話の制御を行います。SIP プロトコルを使って通話の確立 / 切断を管理し、音声データは IP パケットとして中継回線を通じて伝送されます。
固定電話 (加入電話 / INS ネット) の局内設備は、2024 年 1 月 1 日以降、地域ごとに段階的に IP 網へ切り替えられました。NTT 東日本はこの切替を完了したと案内しています (2026 年 8 月時点)。これにより通話は、従来の回線交換方式 (通話ごとに専用回線を確保する方式) からパケット交換方式 (データを小さなパケットに分割して共有回線で伝送する方式) へと変わりました。企業内の電話交換機である PBX についても、装置を自社に設置せずインターネット経由で利用するクラウド PBX という選択肢があります。電話番号の構造で電話網の全体像を、電話番号の桁数の歴史で番号体系の変遷を確認できます。
交換機のデジタル化は付加サービスの土台にもなりました。NTT の D60 形をはじめとするディジタル交換機は音声をデジタル信号として処理し、通話品質の改善に加えて、ナンバー・ディスプレイや転送といった付加サービスを提供しやすくしました。