NFC (Near Field Communication / 近距離無線通信) は、10cm 以内の至近距離で無線通信を行う技術です。13.56MHz の周波数帯を使用し、通信速度は方式によって 106〜424kbps です。おサイフケータイ、Apple Pay、Google Pay などのモバイル決済や、交通系 IC カード (Suica、PASMO) の基盤技術として広く利用されています。かざすだけで通信が成立するのは、カードやチップ側がリーダーから届く電磁波で給電されて動くためで、カード自体に電池は入っていません。
NFC の通信方式は大きく 3 つに分かれます。TypeA と TypeB は海外で広く使われている方式で、海外の非接触クレジットカードや交通系カードの多くがこちらです。TypeF はソニーが開発した FeliCa 方式で、日本ではおサイフケータイや Suica が使っています。FeliCa はかざしてから処理が終わるまで約 0.1 秒と速く、改札のように立ち止まらせずに人を通す用途に向いています。誤解しやすいのは「Apple Pay や Google Pay は TypeA/B なので FeliCa とは別系統」という理解で、日本で販売された iPhone 7 以降や国内向けのおサイフケータイ対応 Android は FeliCa と TypeA/B の両方を扱えるため、Apple Pay や Google Pay から Suica や iD を使えます。
電話との関連では、NFC は端末同士の連絡先交換にも使われていました。2 台を近づけるだけで名刺データや連絡先を送受信できる仕組みで、赤外線通信の後継として位置づけられていました。ただしこの用途を担っていた Android の「Android Beam」は 2019 年に廃止され、その後の共有機能は Bluetooth や Wi-Fi でデータ本体を送る方式へ置き換わりました。2026 年時点で NFC が日常的に使われる場面は、決済、改札、そしてポスターやカードに埋め込まれた情報の読み取りが中心です。
セキュリティ面では、通信距離が 10cm 以内と極めて短いため、離れた場所からの傍受は困難です。ただしスキミング (不正な読み取り) のリスクがゼロというわけではなく、読み取りを遮る素材のケースも市販されています。実務で影響が大きいのは端末そのものの紛失で、この場合は回線の利用停止とは別に、決済機能を止める手続きが必要になることがあります。スマートフォン紛失時の対処も参考にしてください。