赤外線通信 (IrDA) は、赤外線の光を使って近距離 (数十 cm〜1m 程度) でデータを送受信する無線通信技術です。IrDA という呼び名は、規格をまとめた業界団体 Infrared Data Association に由来します。日本のガラケーには標準的に搭載されており、電話帳データの交換、写真の送信、名刺データの受け渡しなどに広く使われていました。
使い方は、2 台の端末の赤外線ポート (多くは端末の上部) を向かい合わせにし、送信側と受信側でそれぞれ操作するだけです。「赤外線で連絡先を送るね」というやり取りは、2000 年代の日本では日常的な光景でした。合コンや飲み会で連絡先を交換する際の定番手段でもありました。
技術的な特徴は、指向性が高いこと (端末同士を向かい合わせる必要がある) と、携帯電話向けの実装では速度が数 Mbps 程度にとどまることです。裏を返せば、向けた相手とだけ通信するので、周囲の誰かに間違って送ってしまう心配は小さい方式でした。Bluetooth と比べると、事前のペアリングがいらない手軽さがある一方、間に手や物が入るだけで転送が止まります。うまくいかないときの原因はたいていポートの位置ずれか距離で、両方の端末を机に置いて動かさないほうが確実でした。
スマートフォンの普及に伴い、携帯電話の機能としての赤外線通信は急速に姿を消しました。連絡先の交換は LINE の QR コードを読み取る方式に置き換わり、データの受け渡しは AirDrop や Bluetooth、クラウド経由が主流になりました。端末を振って近くの相手を探す「ふるふる」のような機能もありましたが、これも後に提供を終えています。2026 年時点では、赤外線通信に対応するスマートフォンはごく一部の機種に残るだけです。
ただし赤外線という技術そのものが消えたわけではありません。テレビやエアコンのリモコンは今も赤外線で信号を送っており、向けた機器にだけ届くという性質がそのまま活かされています。実務で困るのは、古いガラケーに入ったままの電話帳を移したい場合です。赤外線で受け取れる相手側の端末が手元にないことが多いため、メモリーカードへの書き出しや携帯ショップの移行サービスを検討することになります。移した後の管理はスマホの連絡先を安全に管理する方法、機能の変遷は電話機の進化の歴史で確認できます。