ハローページとは何だったのか
ハローページは、NTT が発行していた個人名の五十音順電話帳です。固定電話の契約者の氏名、住所、電話番号が掲載され、地域ごとに冊子として無料で配布されていました。インターネットが普及する以前は、引っ越し先で近所の病院や商店を探す、旧友の連絡先を調べる、災害時に安否確認の手がかりにするなど、暮らしに密着した情報源でした。
その紙の個人名電話帳は姿を消しました。NTT 東日本 / NTT 西日本は 2020 年 6 月 18 日にハローページの発行 / 配布を終了すると発表し、2021 年 10 月以降に発行 / 配布する最終版をもって終了しました。最終版の発行時期は地域ごとのスケジュールによって異なり、お届け期間は発行月から 18 か月間と案内されていたため、地域によっては 2023 年頃まで手元の最終版が使われていたことになります。
廃止に至った 3 つの要因
NTT 東日本 / 西日本は終了の理由として、電話の代替手段の普及、通話アプリや SNS などコミュニケーション手段の多様化、個人情報保護に関する社会的な意識の高まりといった環境変化を挙げ、その結果として配布数と掲載数が大きく減ったと説明しています。この 3 つの流れを順に見ていきます。
個人情報保護意識の高まり
2003 年に個人情報保護法が成立し、2005 年に全面施行されると、個人情報の取り扱いに対する社会の目は急速に厳しくなりました。氏名 / 住所 / 電話番号がセットで公開されている電話帳は、まさに個人情報の塊です。電話番号プライバシーへの関心が高まるにつれて掲載を望まない契約者が増え、NTT も掲載数の大幅な減少を終了の理由に挙げています。掲載件数が減れば「調べたい人の番号が載っていない電話帳」になり、電話帳としての実用性そのものが失われていきます。それまで「公開が当たり前」だった個人の連絡先が、「本人の同意なく公開してはならない」ものへと位置づけを変えた過程でもありました。電話番号のプライバシー管理という考え方が広く共有されるようになった結果です。
固定電話の契約数減少
総務省の統計によると、固定電話 (加入電話 + ISDN) の契約数は 1997 年度の約 6,300 万件をピークに減少を続け、2023 年には約 1,400 万件まで落ち込みました。携帯電話が広く行き渡り、固定電話を引かない世帯が増えたためです。固定電話の契約者が減れば電話帳に載る情報も減り、電話帳の価値がさらに下がるという循環に陥りました。
インターネット検索の普及
電話番号を調べる手段は、紙の電話帳から検索サービスへ移りました。店名や施設名を検索すれば電話番号が表示され、地図アプリからそのまま発信できます。通話アプリや SNS が連絡手段として定着したことも、番号を調べて電話をかける場面そのものを減らしました。事業者向けの電話帳はオンラインの「iタウンページ」として NTT タウンページ株式会社が提供しており、紙の冊子が担ってきた役割はデジタル側へ移っています。
電話帳が悪用された歴史
ハローページに掲載された個人情報は、犯罪に悪用されることもありました。
- 振り込め詐欺の名簿: 電話帳から高齢者の氏名と電話番号を書き写し、電話詐欺の一種である振り込め詐欺のターゲットリストに使う手口が問題になりました。名前の字面から年代を推測して架電先を絞り込むやり方も知られています
- 名簿業者への転売: 電話帳のデータをデジタル化して名簿として売買する動きもありました。電話帳は公開情報であるため収集そのものが直ちに違法とはいえませんが、集められたデータが迷惑電話や詐欺に使われる二次被害が問題視されました
- つきまとい行為: 電話帳から特定の個人の住所をたどり、つきまとい行為に使われることもありました
- 空き巣の下調べ: 掲載されている番号に電話をかけて不在を確かめる、という在宅確認の手段にもなり得ました。住所と電話番号がセットで載っている構造そのものが、悪用されやすい弱点でした
こうした悪用が知られるほど、掲載を断る契約者は増えていきました。
ハローページ廃止後の影響
高齢者への影響
影響が大きかったのは、インターネットで検索する習慣のない高齢者層です。かかりつけ医の番号、近所の商店の連絡先、行政窓口の番号など、電話帳を開いて確かめていた情報の代わりを用意する必要が生じました。自治体が配る「くらしの便利帳」のような冊子が、地域の連絡先をまとめた手元の資料として使われる場面もあります。
事業者向け電話帳の存続
個人名の電話帳であるハローページは終了しましたが、事業者名の電話帳である「タウンページ」は NTT タウンページ株式会社がオンライン版 (i タウンページ) として続けています。事業者の電話番号は営業のために自ら公開する情報であり、個人情報保護の問題が起こりにくいためです。
電話番号検索サービスの台頭
ハローページの終了と前後して、当サイトのような電話番号検索 / 口コミサービスが使われるようになりました。知らない番号から着信があったとき、番号検索で発信元の手がかりや他の利用者の口コミを確認できます。電話帳が「番号から人を探す」ツールだったのに対し、番号検索サービスは「着信番号の正体を調べる」ツールであり、役割が裏返っています。知らない番号からの電話への対処法も参考にしてください。
世界の電話帳事情
紙の電話帳の縮小は日本だけの動きではありません。欧米でも、住宅用の紙の電話帳は全戸配布から希望者への配布へ切り替えられたり、発行そのものが終了したりしてきました。やめる時期や残し方は国や通信事業者ごとに異なり、紙をたたんでもオンライン版を残す例があります。ドイツでは「Das Telefonbuch」(電話帳) がオンラインの検索サービスとして運営されています。データ漏洩と電話番号の流出リスクを踏まえると、誰の連絡先をどこまで公開するかという線引きは、紙かデジタルかを問わず残る論点です。
個人名電話帳が姿を消した後の番号の調べ方
最終版の配布が終わったあとは、番号を調べる道筋が用途ごとに分かれました。事業者の番号なら検索サービスや地図アプリで見つかります。個人の番号は、本人に直接聞くか、共通の知人を介して教えてもらうのが基本です。電話帳をめくれば誰の番号でも分かる時代は終わり、電話番号は「公開情報」から「個人が管理するプライベートな情報」へ位置づけが変わりました。電話番号のプライバシー管理が誰にとっても身近な課題になったということです。知らない番号から着信があったときは、当サイトのような番号検索サービスで発信元を確かめてから、折り返すかどうかを決めましょう。