PHS (Personal Handy-phone System) とは、日本で開発された簡易型携帯電話システムです。070 で始まる番号を使用し、1995 年のサービス開始から主に個人向け / 医療機関向けに普及しました。ピーク時の 1997 年には約 700 万契約を記録し、「ピッチ」の愛称で親しまれました。
PHS は携帯電話と比較していくつかの技術的な特徴がありました。通話品質が高く (32kbps の ADPCM コーデックで、当時の携帯電話より明瞭な音声)、電磁波の出力が弱い (10mW 程度、携帯電話の約 200 分の 1) ため医療機器への影響が少なく、病院内での利用に適していました。基地局 (セルステーション) の設置コストが携帯電話の基地局の 10 分の 1 程度と低く、マイクロセル方式 (半径 100〜500m の小さなセル) で高密度なエリアカバーを実現していました。料金も携帯電話より安価で、学生や若年層に支持されました。
PHS の衰退は、携帯電話の高速化 / 低価格化と軌を一にしています。3G の普及で携帯電話の通話品質が PHS に追いつき、パケット定額制の導入で料金面の優位性も失われました。個人向けサービスは、当初予定の 2020 年 7 月末からコロナ禍で延期された後、2021 年 1 月末に終了しました。法人向けの「テレメタリング」(自動検針) サービスも 2023 年 3 月末に終了し、これで PHS のサービスはすべて終了しました。ただし技術の系譜は途切れておらず、病院や工場の内線に使われてきた構内 PHS の後継として、1.9 GHz 帯を使う自営システムの sXGP (shared eXtended Global Platform) が規格化されました。
PHS で使われていた 070 番号帯は、番号枯渇対策として 2013 年から携帯電話番号として再利用されています。PHS のサービス終了後、070 で始まる番号は携帯電話番号として割り当てられています。070 番号を見て PHS かどうかを判断することはできません。090/080/070 番号の違いで番号帯の詳細を、電話番号の桁数の歴史で通信技術の変遷を確認できます。