ADSL (Asymmetric Digital Subscriber Line / 非対称デジタル加入者線) は、既存の電話回線 (銅線) を使ってインターネットに高速接続する技術です。「非対称」とは、下り (ダウンロード) と上り (アップロード) の速度が異なることを意味します。NTT 東日本のフレッツ・ADSL では、最も速い品目 (モア III・47M タイプ) が下り 47Mbps・上り 5Mbps で、下りに帯域を大きく振り分ける設計でした。いずれもベストエフォート型で、技術規格上の最大値です。
日本では 2000 年ごろに ADSL の商用サービスが始まりました。2001 年 9 月に提供が始まった Yahoo! BB などの参入で料金競争が進み、爆発的に普及しました。それまでのダイヤルアップ接続 (56kbps) と比べて桁違いの速度を実現し、「常時接続」という概念を一般家庭にもたらしました。ADSL の普及は日本のブロードバンド化を一気に加速させました。
ADSL の弱点は、電話局からの距離が遠いほど速度が低下する点です。NTT 東日本の説明でも、回線距離や設備状況、他回線との干渉、宅内の通信設備などの影響で速度が低下したり利用できない場合があるとされていました。電話回線と同じ銅線を使うため、こうした条件に通信品質が左右されやすい技術でした。
光回線の普及に伴い、ADSL の契約数は減少の一途をたどりました。フレッツ・ADSL は光回線が整備された地域から段階的に終了し、NTT 東日本は 2025 年 1 月 31 日、NTT 西日本は 2026 年 1 月 31 日をもって提供を終了しました。新規・移転の申込受付は東西とも 2023 年 7 月 31 日で終わっています。2000 年ごろの商用開始から約 25 年で歴史に幕を閉じましたが、日本のインターネット普及に果たした役割は極めて大きいものでした。電話機の進化の歴史で通信技術の変遷を振り返ることができます。