DTMF (Dual-Tone Multi-Frequency) とは、電話機のボタンを押した際に発生する 2 つの周波数を組み合わせた音声信号です。プッシュ信号、トーン信号とも呼ばれ、電話機と交換機の間で数字情報を伝達する仕組みとして 1960 年代から使われています。
DTMF は低群 (697〜941 Hz) と高群 (1209〜1477 Hz) の 2 つの周波数を同時に鳴らすことで信号を識別します。たとえば「1」は 697 Hz + 1209 Hz、「5」は 770 Hz + 1336 Hz の組み合わせです。2 つの周波数を同時に使う理由は、人の声や環境音による誤検出を防ぐためです。単一周波数だと偶然一致する可能性がありますが、特定の 2 周波数が同時に発生する確率は極めて低くなります。
0〜9 の数字に加え、* (アスタリスク) と # (シャープ) の計 12 種類の信号が標準で定義されています。さらに A〜D の 4 つの拡張信号もありますが、一般の電話機には搭載されていません。
DTMF の最も身近な利用場面は IVR (自動音声応答) システムの操作です。「○○の方は 1 を押してください」という案内に従ってボタンを押すと、DTMF 信号がシステムに送信され、対応するメニューに振り分けられます。銀行のテレフォンバンキングで暗証番号を入力する際も DTMF が使われています。VoIP 環境では音声信号ではなく RFC 4733 に基づくデジタル信号として伝送されますが、ユーザーの操作感は同じです。電話番号の構造ガイドで電話技術の基礎を学べます。