特定商取引法とは、訪問販売 / 通信販売 / 電話勧誘販売 / 連鎖販売取引 / 特定継続的役務提供 / 業務提供誘引販売取引 / 訪問購入の 7 つの取引類型を対象に、事業者の勧誘や契約の進め方を規制し、消費者側の解除権などの救済手段を定める法律です。1976 年に「訪問販売等に関する法律」(昭和 51 年法律第 57 号) として制定され、2000 年の改正 (法律第 120 号) によって 2001 年 6 月 1 日から現在の名称になりました。電話でのやり取りが問題になる場面では、このうち電話勧誘販売の規定が中心になります。
電話勧誘販売に関する主な規制は 4 つです。第一に、勧誘に先立って事業者名 / 勧誘が目的である旨 / 商品やサービスの種類を告げる明示義務 (第 16 条)。第二に、再勧誘の禁止 (第 17 条) で、契約を締結しない旨の意思を表示した相手への勧誘は禁じられています。第三に、不実告知 / 故意の事実不告知 / 威迫して困惑させる行為の禁止 (第 21 条)。第四に、郵便等で申込みを受けたときの書面交付 (第 18 条) と契約を締結したときの書面交付 (第 19 条) の義務です。ただし営業のためもしくは営業として行う取引や、本邦外にいる相手への販売などは適用除外 (第 26 条) とされており、事業者間の電話勧誘には同法の規制が及びません。
実務で効き目が大きいのは、書面交付義務とクーリング・オフの関係です。電話勧誘販売の場合、第 19 条の書面 (先に第 18 条の書面を受け取っていればその書面) を受領した日から起算して 8 日間が行使できる期間とされています (第 24 条)。つまり書面が交付されないままなら期間は始まりません。不実告知や威迫によって行使を妨げられていた場合は、事業者から改めて交付される是正書面を受領した日から 8 日間となります。書面を発した時点で効力が生じ、事業者は損害賠償や違約金を請求できないと定められています。
違反した事業者には、主務大臣による必要な措置の指示 (第 22 条) に加え、取引の公正や購入者の利益が著しく害されるおそれがあると認められる場合には 2 年以内の期間を限った業務停止命令 (第 23 条) が出され、命令があったときは公表されます。さらに、その法人の役員や使用人などに対して同一の期間、同種の業務を新たに始めること (他の法人の役員に就くことを含む) を禁止する命令 (第 23 条の 2) もあり、法人を作り替えて同じ勧誘を続ける形を封じる仕組みになっています。罰則としては、第 16 条の不明示や第 21 条の不実告知に対して 3 年以下の拘禁刑または 300 万円以下の罰金 (第 70 条) などが定められています。
電話を受ける側として覚えておくと役に立つのは、規制の対象が「契約したかどうか」ではなく勧誘の過程そのものだという点です。「今日中に決めてください」と急かされたり、断った後にまた同じ事業者から電話が来た場合は、契約に至らなくても第 17 条や第 21 条に触れる可能性があります。日時 / 事業者名 / 電話番号 / 言われた内容を残しておけば、消費者ホットライン (188) から最寄りの消費生活センターに相談するときに状況を伝えやすくなります。届出先ごとの違いは電話詐欺の通報方法と届出先一覧で確認できます。テレマーケティング業者からの不審な電話への具体的な対応は営業電話 / 勧誘電話を断る方法にまとめています。