宅配便を装う詐欺が広がる背景
通販の普及で、宅配便の取扱個数は年間 50 億個規模に達しています。多くの人が日常的に荷物を受け取る状況を悪用し、宅配便を装った詐欺電話や SMS が繰り返し確認されています。「お荷物をお届けに上がりましたが不在でした」という SMS を受け取った経験がある方も多いのではないでしょうか。
この手口が巧妙なのは、実際に荷物を待っている人が多いため、不審に思わずリンクをクリックしたり電話をかけ直したりしてしまう点です。発信元には 080 や 090 の携帯番号、050 の IP 電話番号が使われることが多く、正規の配送業者の番号に見せかける番号偽装も確認されています。特にネット通販の利用が増える年末年始やセール期間には、この手口の被害が集中する傾向があります。
SMS を起点とした詐欺の手口
フィッシングサイトへの誘導
代表的な手口は、偽の不在通知 SMS からフィッシングサイトに誘導するパターンです。SMS には「お荷物のお届けに上がりましたが不在のため持ち帰りました。再配達はこちら」というメッセージとともに URL が記載されています。リンク先は大手宅配業者の公式サイトに酷似した偽サイトで、再配達の手続きを装って個人情報やクレジットカード情報の入力を求めます。
偽サイトの URL は正規サイトと微妙に異なります。英字の「o」を数字の「0」に置き換える、正規のドメイン名にハイフンや余分な単語を足す、末尾のドメインだけをすり替えるといった具合で、一見しただけでは気づきにくいフィッシング偽装が施されています。短縮 URL サービスで本来のアドレスを隠す手口も確認されています。アドレスバーに表示されるドメイン名を、公式アプリや自分で登録したブックマークと 1 文字ずつ見比べるのが確実です。見分け方はSMS 詐欺メッセージの見分け方で詳しく解説しています。
不正アプリのインストール
Android スマートフォンの場合、偽サイトから「配送状況確認アプリ」と称した不正アプリのインストールを促されるケースがあります。このアプリをインストールすると、スマートフォン内の連絡先、SMS、写真などの個人情報が窃取されるだけでなく、被害者のスマートフォンから大量の詐欺 SMS が自動送信される二次被害も発生します。本人が気づかないうちに大量の SMS が送信され、通信料が高額に膨れ上がることもあります。
iPhone の場合は、App Store 以外からのアプリインストールが制限されているため、不正アプリの被害は少ないですが、代わりに Apple ID とパスワードの入力を求めるフィッシングページに誘導されるケースがあります。Apple ID が窃取されると、iCloud に保存された写真や連絡先、さらには Apple Pay に登録されたクレジットカード情報まで悪用される危険があります。
電話を使った宅配便詐欺の手口
配達員を装った電話
宅配業者の配達員を名乗り、「お届け物がありますが、届け先の住所が不明確です。確認のためお名前とご住所を教えてください」と電話をかけてくる手口です。荷物の送り主や内容を聞いても曖昧な回答しかなく、個人情報の確認だけを執拗に求めます。正規の配達員であれば、送り状に記載された情報で配達先を特定できるため、電話で住所を確認する必要はありません。
代引き詐欺
注文していない商品を代引き (着払い) で送りつけ、受け取り時に代金を支払わせる手口です。事前に電話で「○○様宛にお届け物があります。代引きで 3,980 円です」と連絡し、あたかも正規の注文品であるかのように装います。家族が多い世帯では「誰かが注文したのだろう」と思い込んで支払ってしまうケースが報告されています。送りつけられるのは、請求額に見合わない安価な雑貨や中身が空の箱といったものです。
関税・手数料の請求
「海外からのお届け物に関税がかかっています。お支払いいただかないとお届けできません」と電話で連絡し、コンビニでの電子マネー購入や指定口座への振り込みを求める手口です。実際の関税は配達時に配達員に支払うか、通関業者から正式な書面で請求されるものであり、電話で電子マネーでの支払いを求められることはありません。海外通販の利用が一般的になったことを悪用した手口です。
代表的な被害事例
事例 1: SMS から個人情報を窃取されたケース
30 代女性の H さんは、ネット通販で商品を注文した翌日に「不在のため荷物を持ち帰りました」という SMS を受信しました。ちょうど荷物を待っていたため、記載された URL にアクセスし、再配達の手続きとしてクレジットカード情報を入力。翌月のカード明細で約 15 万円の不正利用が発覚しました。H さんは「タイミングが完璧だったので、本物だと疑わなかった」と振り返っています。
事例 2: 不正アプリによる二次被害
50 代男性の I さんは、宅配便の不在通知を装った SMS のリンクから「配送追跡アプリ」をインストールしました。その後、I さんのスマートフォンから 1 日に約 5,000 件の詐欺 SMS が自動送信され、通信料が約 30 万円に膨れ上がりました。さらにスマートフォン内の連絡先情報が流出し、知人にも同様の詐欺 SMS が届く事態になりました。I さんは通信事業者に事情を説明して料金の取り扱いを相談しましたが、流出した個人情報を取り戻すことはできませんでした。
事例 3: 代引き詐欺の被害
40 代男性の J さんは、「お届け物があります」という電話の後、代引きで届いた荷物を受け取り 5,000 円を支払いました。中身は 100 円程度の安価な雑貨でした。家族に確認したところ誰も注文しておらず、詐欺と判明しました。J さんは「配達員が正規の制服を着ていたので疑わなかった」と話しています。実際には、詐欺グループが正規の宅配サービスを利用して商品を送りつけていたため、配達員自体は本物でした。
宅配便詐欺を見抜くポイント
- SMS 内の URL を安易にクリックしない - 文面や送信元番号だけでは本物かどうか判断できません。再配達は SMS のリンクからではなく、公式サイトや公式アプリを自分で開いて手続きしましょう
- 荷物の追跡番号を確認する - 不在票や公式アプリの通知には追跡番号が示されます。番号のない通知、注文履歴と一致しない番号の通知は詐欺を疑いましょう
- 電話で個人情報を求められたら警戒する - 正規の配達員が電話で住所や氏名の確認を求めることは通常ありません
- 身に覚えのない代引き荷物は受け取らない - 受け取り前に送り主と内容を確認し、不審な場合は受取拒否しましょう
- 公式アプリを活用する - ヤマト運輸、佐川急便、日本郵便の公式アプリで配送状況を確認する習慣をつけましょう
- 不審なアプリはインストールしない - SMS のリンク先でアプリの導入を促されたら詐欺を疑ってください。アプリは必ず公式ストアから入手しましょう
電話番号のプライバシー保護の観点からも、配送伝票の取り扱いには注意が必要です。スマートフォンのプライバシー設定で不審な SMS の自動フィルタリングを有効にしておくことも有効な対策です。
被害に遭った場合の対処
フィッシングサイトに情報を入力してしまった場合
- クレジットカード情報を入力した場合は、直ちにカード会社に連絡して利用停止を依頼する
- ID・パスワードを入力した場合は、該当サービスのパスワードを速やかに変更する
- 同じパスワードを使い回している他のサービスも変更する
- 不正利用が確認された場合は、カード会社にチャージバック (返金) を申請する
不正アプリをインストールしてしまった場合
- 機内モードに切り替えて通信を遮断する
- 該当アプリをアンインストールする
- スマートフォンを初期化し、バックアップから復元する (不正アプリインストール前のバックアップを使用)
- 通信事業者に連絡し、不正送信された SMS の料金について相談する
- 連絡先に登録されている知人に、詐欺 SMS が届く可能性がある旨を通知する
いずれの場合も、電話詐欺の通報方法を参考に警察への届け出を行ってください。フィッシング対策協議会への報告も、同様の被害の拡大防止に貢献します。
まとめ
宅配便を装う詐欺は、日常的な荷物の受け取りという行為を悪用するため、誰もが被害に遭う可能性があります。SMS 内の URL はクリックせず公式アプリで確認する、電話で個人情報を伝えない、身に覚えのない荷物は受け取らないという 3 つの原則を徹底することで、被害を未然に防ぐことができます。荷物の配送状況は必ず公式アプリや公式サイトで確認する習慣を身につけましょう。